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2017年10月 1日 (日)

ドリーム

 アメリカ初の有人宇宙飛行計画を陰で支えた黒人女性たちを描いた映画「ドリーム」を見てきました。
 封切り3日目日曜日映画サービスデー、TOHOシネマズ新宿スクリーン4(200席)午前9時50分の上映はほぼ満席。(ネタバレ注意)

 1961年、ソ連に人工衛星打ち上げ(スプートニク)、有人宇宙飛行(ガガーリン)で後れを取ったアメリカでは、有人宇宙飛行の成功が求められ、NASAに強いプレッシャーがかかっていた。ヴァージニア州にあるNASAのラングレー研究所に勤めていた黒人女性のキャサリン(タラジ・P・ヘンソン)、メアリー(ジャネール・モネイ)、ドロシー(オクタヴィア・スペンサー)の3人は、キャサリンは宇宙船の軌道計算のために幾何学解析のエキスパートが欲しいスペース・タスク・グループに抜擢されるが「非白人用トイレ」もない中でその都度800m離れた別棟のトイレに駆け込み白人男性ばかりの職場で白人男性の上司ポール・スタッフォード(ジム・パーソンズ)に見下されながら孤軍奮闘し、宇宙船の風洞実験に立ち会ったメアリーは遮熱板の剥離の対策を論じてエンジニアへの応募を勧められたがマネージャーミッチェル(キルステン・ダンスト)にエンジニアとして採用されるにはどちらも白人しか入学を許可されていない大学(ヴァージニア大学)か高校を出ていなければならない規則があると拒絶され、西計算グループを管理するドロシーは管理職登用を求めてもミッチェルから黒人グループに管理職は置かないと拒否される。キャサリンの卓越した能力を見いだした本部長ハリソン(ケビン・コスナー)は、キャサリンがいつも大事なときに席を外していると問い詰めて、キャサリンから建物に「非白人用」トイレがなく毎度800m離れた西計算グループまで走って行くから40分もかかる、コーヒーポットさえ「白人用」と「非白人用」(非白人はキャサリンしかいないのに)に分けられて「非白人用」のポットはだれも触らないと訴えられ・・・というお話。

 黒人女性の主人公3人が、職場で、能力があってもいつまでも臨時職扱いで正社員や管理職になれない、部屋が隔離されていたり、抜擢されてもトイレやコーヒーポットも「白人用」のものは使わせない、会議には参加させない、書類には計算係の名前は書かせないなどの差別を受けつつ、それぞれのやり方でそれを乗り越えていくという過程がテーマで、それぞれに乗り越えていく場面で感動があります。

 キャサリンは、小学生にして、黒人が行ける最高の高校への入学を許された天才少女。NASAでも与えられた難題を次々と黒板に手計算で数式を連ねて解答を出し、実力を見せつけ、周囲に存在を認めさせ、本部長の信認を勝ち得ていきます。キャサリンの訴えを聞いた本部長がトイレの「非白人用」の表示を叩き壊し、これからは「白人用」も「非白人用」もない、どちらを使ってもいい、できるだけ席に近い方を使え、NASAでは黒人も白人も小便の色は同じだというシーンが象徴的です。
 メアリーは、すでにウェストヴァージニア大学(黒人も入学可:南北戦争の際、奴隷解放反対の南軍の中心となったのがヴァージニア州で、当時のヴァージニア州から奴隷解放賛成派が独立してウェストヴァージニア州を作ったという歴史的経緯があります)の大学院を出ていて本来今更高校で学ぶ必要などないのですが、ミッチェルが規則だという白人しか入学を許可しない高校に入学するため、裁判所に訴えます。メアリーは、判事の経歴を調べ上げ、何事にも初めてのことがある、あなたは一族で初めての判事だ、私はNASAで初めての黒人のエンジニアになりたい、肌の色は変えられないからこの高校に入る必要がある、判事が抱えている多数の事件に初めてを作る事件は、100年後にも意味がある事件はいくつあるかと迫ります。説得術として、参考にしたいところです。
 ドロシーは、NASAにコンピュータが導入されたのを見て、このままでは計算係は皆職を失うと危惧して、図書館に行き、非白人用のコーナーには目指す本がないため白人用書棚に行ったところ、警備員に追い出されたがフォートラン(コンピュータ言語)の解説書を発見して持ち出して、独学でコンピュータ操作を学び、白人職員たちがせっかく導入されたコンピュータを動かすこともできずにいるのを尻目にコンピュータ室に忍び込み計算を始めます。ドロシーがコンピュータを使えることがわかったNASAからの抜擢を、自分一人では嫌だと断り、計算係全員にプログラミングを教えてプログラマーとして採用させてその室長に収まります。

 差別を、運動・闘争によってではなく、個人の実力を示すことで乗り越えた黒人女性たちの物語で、ストーリーとしてはキャサリン中心なのですが、私としては、ドロシーのしたたかさが光る話に思えました。

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