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2016年12月11日 (日)

アズミハルコは行方不明

 現代日本社会での女性の生きにくさを描いた映画「アズミハルコは行方不明」を見てきました。
 封切2週目日曜日、新宿武蔵野館スクリーン1(128席)午前9時45分の上映は2割くらいの入り。

 親元の地方都市で暮らす28歳・独身・恋人なしの事務員安曇春子(蒼井優)は、勤務先では、女性は早く結婚して子どもを産むべきだと言い募り安月給しか払わない社長と専務の下、会社を事実上切り盛りしている10歳年上の吉澤(山田真歩)が手取り月給17万円で働かされ煙たがられている姿を見続け、家では疲れた両親の様子を見続けていた。安曇春子は、母に言われてトイレットペーパーを買いに行ったスーパーで幼馴染の曽我(石崎ひゅーい)と再会し、曽我が女子高生軍団にリンチを受けて池に投げ込まれたのを助けた夜、曽我の部屋でセックスし、逢瀬を重ねるようになる。時は飛んで、アズミハルコが失踪し交番に尋ね人ポスターが貼られた同じ都市で、名古屋の大学に行ったユキオ(太賀)と成人式で再開したキャバクラ嬢の愛菜(高畑充希)は、ユキオと同級生だった学(葉山奨之)が街頭でスプレイの落書きを始めアズミハルコの尋ね人ポスターの写真を使った落書きを量産するのを見て一緒に落書きを始め、盛り上がるが…というお話。

 最初からネタバレになりますが、女性の生きにくい社会で、抑圧者としての男たちへの復讐心を表現するのに、たまたま出会った男にストレートに暴力をぶつける謎の女子高生軍団、自分を傷つけた男の作品(物)の破壊に励む愛菜、自分を傷つけた男に刃を向けることなく失踪し自分が「優雅な生活」を送ることが復讐だと愛菜に諭す安曇春子という、3者3様が、おそらくは制作者の目指したテーマなのだろうと思います。そして、ラストに愛菜に微笑む安曇春子を置く構成からしても、安曇春子の選択が、より洗練された復讐であると言いたいのでしょう。
 しかし、加害者の受けるダメージは、女子高生軍団のリンチでは直接的(心理的なダメージもかなり大きいと思います。特に、女性はか弱く従順なものという、「常識」・認識を持つ男ほど)なのに対し、愛菜の破壊では間接的に、そして安曇春子の失踪なり「優雅な生活」ではほとんどない(痛くもかゆくもない)ということになります。安曇春子側の気持ちの整理としては、現実的なものと言えますが、加害者に打撃を加えうる復讐を抑制することで、加害者に都合のいいものとも言えます。そもそもこの作品自身が描いている女性が生きにくい現在の日本社会で、親元/勤務先を離れて失踪した安曇春子は、どうやって「優雅な生活」を手に入れるというのでしょうか。現実の世界/人生の現実が変わらない/変えられない中で、気の持ちようだけを変えて、惨めだったはずの現実を優雅なものと受け入れていく、怪しげな新興宗教にからめとられていくような途しか待っていないということでなければよいのですが。
 私には、むしろ謎の女子高生軍団の暴力の方が爽快に見えてしまいました。誠意のない甲斐性なしの男たちがなすすべもなく倒される展開は、男たちもまた生きにくい様子をも示しているようにも見えますし、一番無節操で無責任なユキオはやられないで、相対的には愛菜に向き合おうとする学の方がリンチに遭うというのも不条理に思えますが。

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