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2016年7月24日 (日)

帰ってきたヒトラー

 アドルフ・ヒトラーが2014年のドイツにタイムスリップし物まね芸人としてテレビ出演し人気を博すという映画「帰ってきたヒトラー」を見てきました。
 封切り6週目日曜日、TOHOシネマズ新宿スクリーン1(86席)午前10時50分の上映は、ほぼ満席。

 1945年に籠もった地下壕から2014年にタイムスリップして現代ドイツに現れたアドルフ・ヒトラー(オリバー・マスッチ)は、テレビ局からリストラ通告された番組制作者ファビアン・ザヴァツキ(ファビアン・ブッシュ)に引きずり回されて各地で人々と対話し、その様子を撮影したビデオがYouTubeで話題を呼んだ。ザヴァツキからアピールされたテレビ局が、局長カッチャ・ベリーニ(カッチャ・リーマン)の判断でヒトラーをバラエティ番組に出演させたところ、ヒトラーは持ち前の演説・演出力で聴衆を引き込み、視聴率も上昇するが、ザヴァツキとの行脚の途中でヒトラーが指に噛みついた犬を射殺したビデオが放映されると、視聴者の非難が集中し、ヒトラーの出演はストップ、局長は辞任に至った。諦めきれないザヴァツキは、ヒトラーに日記を書かせて出版し、これが話題を呼んでその映画化を図るが…というお話。

 ナチスの行為を批判し、過去と訣別したはずのドイツにおいて、それでも独裁/民主主義・自己決定の放棄への誘惑、国粋主義・排外意識のくすぶりが、きっかけ/言い訳さえ見いだせばすぐにも顔を出し人々を魅了しかねないという危うさが、テーマとされています。
 そして現代ドイツのマスメディアのありようが、それに次ぐテーマになっていると思います。いかなるものでも自己の利益のために利用し、視聴率が稼げればどのような番組でも作るが、肝心なことは報道しようとしないテレビ局の体質も。ヒトラーのテレビ出演をやめさせたのがユダヤ人大量虐殺などの過去への反省ではなく、犬が射殺されたことへの反発だったことも。
 ヒトラーが、計画を明示した上で、選挙で勝利したということを何度か示し、この独裁者を政権につけたのは、民衆の選択であった、視聴率第一主義のテレビ局にバラエティ番組しか作らせない結果となる人々の視聴傾向もあわせて、それは人々の意識/民主主義のありようにかかっているのだと、この作品はいいたいのです。
 ヒトラーが、緑の党が一番本物だ(祖国と環境を守るというのはいいことだ。ただし反原発は間違っている。原子力は核兵器に利用できるのだから)と述べ、ネオナチをニセモノだと批判するのは、皮肉と見るべきでしょうか、そのままに受け取るべきでしょうか。

 テレビ局が選挙期間中は政治の報道をしない、選挙期間中以外でももはや政権に不利益になる報道はしないという状態が続き、憲法改正をいう(選挙期間中だけはいわないという小狡さだけはある)政治勢力が選挙で勝利してしまう国は、この映画の状況よりも問題が進んでいるように思えます。そしてその政治勢力が、かつてはその民族主義的主張から旗印としていた「陛下」からも平和の大切さを指摘され暴走をたしなめられて、その言葉さえ無視するほどに凶暴に変身していることを考えれば、危険の度合いはドイツの比ではないと思えるのですが。

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