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2016年5月

2016年5月29日 (日)

素敵なサプライズ ブリュッセルの奇妙な代理店

 自殺幇助業者に依頼した自殺志望の富豪の心変わりを題材にしたコメディ映画「素敵なサプライズ ブリュッセルの奇妙な代理店」を見てきました。
 封切り2日目日曜日、新宿ピカデリースクリーン6(232席)午前9時20分の上映は7割くらいの入り。

 4歳の時に父を失ってから感情を示さなくなった富豪の息子ヤーコブ(イェルン・ファン・コーニンスブルッヘ)は、母親が病死して1人になると、巨額の財産を財団に寄付し、首つりや銃、車の排気ガスでの自殺を図るが邪魔が入って果たせず、海岸の絶壁に向かった際に、車椅子を押していった男が一人で帰っていくのを見て、現場に残されたマッチに記載されたブリュッセルにある謎の会社「エリュシオン」を訪ねた。その会社は、自殺希望の者と契約して、事故死に見せかけて抹殺する裏稼業をしていた。自殺を希望するヤーコブは、社長(ヘンリー・グッドマン)の勧めで、日常生活の間で予告なく突然に事故死が訪れる「サプライズ」コースの契約をし、契約後はいかなる場合も変更不可能と念を押される。エリュシオン社の事務所で出会った自分もサプライズコースを頼んだというアンネ(ジョルジナ・フェルバーン)から3日後に安否確認の電話を受け、自分の前に契約した老夫婦が事故死した現場近くで出会ったヤーコブは、次第にアンネに惹かれ…というお話。

 お城のような豪邸で多数の執事・メイドを雇って、特に仕事もせずに母の生前は週1度母親と通うダンスクラブ行きがほぼ唯一の外出という暮らしをしてきた大富豪が、母親が死んで家族がいなくなったためにすべてを投げ捨てて死にたいと言い出す、何を贅沢なと思う設定です。そこへ持ってきて、それで多数の労働者が、使用者のただの気まぐれで(年末までの給料は払うとはいうものの)解雇されるのですから、労働者側の弁護士としては、あぁこれだから零細企業のわがままな経営者は…という義憤が先に立ってしまいます。
 完全に事故死に見せかけるというのに、現場にマッチを残すのでは、まるで犯行声明。ヤーコブに最初に突進してくるトラックの運転手、ブレーキが効かない様子ですが、あれはエリュシオン社の刺客なのか、巻き込まれた無関係な運転手なのか、それともエリュシオン社の仕業でなく偶然なのか、そこが気にかかります。エリュシオン社の仕業で無関係な運転手が巻き込まれたのなら、事故死に見せかけた自殺幇助、では済まないと思うのですが。
 終盤で依頼者を裏切る弁護士が登場しますが、オランダでも弁護士についてそういう目で見る風潮が出て来ているのでしょうか。会社側の弁護士なので、私とは領域、スタンスが違いますが、ちょっと残念な気がします。

2016年5月15日 (日)

64-ロクヨン-前編

 横山秀夫の警察小説を映画化した映画「64-ロクヨン-前編」を見てきました。
 封切り2週目日曜日、新宿ピカデリースクリ-ン6(232席)午前11時20分の上映は8割くらいの入り。

 7日間しかなかった昭和64年の1月5日に発生し未解決の少女誘拐殺人事件、通称「64」が時効まであと1年となる平成14年12月、私生活では父親に似た自分の顔が気に入らないと家出して音信不通の娘あゆみ(芳根京子)とその娘の身を案じて憔悴する妻美那子(夏川結衣)を抱え、日常業務では交通事故の加害者の妊婦の匿名発表で記者クラブからつるし上げを食い上司の赤間警務課長(滝藤賢一)との板挟みになり窮地に陥っている広報官三上義信(佐藤浩市)の元に、警察庁長官が64の視察に来るという連絡があった。赤間の指示で遺族雨宮(永瀬正敏)に訪問の同意取りつけに行った三上は、妻も亡くし一人になって抜け殻のようになっている雨宮から長官の訪問を断られ…というお話。

 ミステリーを、原作を読んでから見るっていうのはちょっとねぇと思いましたが、映像は映像としての緊迫感があってよかったと思います。
 導入部を、原作の三上の主観・立ち位置・悩みからではなく、事件から入ったのは、映画としてはわかりやすいし正解だと思います。他方、長官訪問をめぐる刑事部と警務部の確執・さや当て、64の暗部「幸田メモ」をめぐる三上の探索が、原作と比べてあっさりし過ぎていて、ミステリーとしての溜がなく、前編のラストの刑事部「籠城」をめぐる三上の思い・激情が見ていて理解しにくいと思いました。
 キャスティングでは、松岡捜査一課長(三浦友和)は原作を読んだときの私のイメージではもう少し若くてスマートな印象でしたが、「ストロベリー・ナイト」に続き、捜査一課長は三浦友和という相場観があるんでしょうか。東洋新聞の記者秋川(瑛太)は、原作でも少しチャラい印象はあるのですが、私の印象以上に浮いた感じ。記者は主人公ではなく、あくまでも警察から見た記者なんてこんな感じという表現でしょうか。
 誘拐殺人事件で娘を奪われた雨宮の姿、やっぱり切ない、泣ける。自分の顔が気に入らないといってキレて騒ぎ家出するあゆみ、やっぱり全然共感できない。それでもそんな娘でもいなくなると心配で身が細る、それが親心というのも哀しい。このあたりは、原作を読んだときの感情とほぼ同じでした。

2016年5月 8日 (日)

レヴェナント 蘇えりし者

 レオナルド・ディカプリオが5度目のノミネートでついにアカデミー賞主演男優賞を獲得した映画「レヴェナント 蘇えりし者」を見てきました。
 封切り3週目日曜日、新宿ピカデリースクリーン4(127席)午前10時55分の上映は、ほぼ満席。

 アメリカ北西部の先住民の地で毛皮を取る狩猟部隊に、先住民のポーニー族の亡き妻(グレイス・ドーブ)との間の子ホーク(フォレスト・グッドラック)を連れて参加していたヒュー・グラス(レオナルド・ディカプリオ)は、部隊がアリカラ族に襲われて撤退する途中で熊に襲われて瀕死の重傷を負い、応急手当を受け板に載せられて運ばれるが、45人いた部隊が10人にまで減り板を担いで急な坂を登ることができなくなって、置いて行かれることになる。ヘンリー隊長(ドーナル・グリーソン)は、居残りを申し出たハンターのフィッツジェラルド(トム・ハーディ)と見習のブリジャー(ウィル・ポールター)にグラスの死を見届けて埋葬することを指示するが、動けないながらに予想外に生き続けるグラスにしびれを切らしたフィッツジェラルドは、ブリジャーが離れたすきにグラスの首を締め、邪魔立てするホークをグラスの目の前で刺し殺した。戻ってきたブリジャーに、ホークはどこかに行った、アリカラ族の追っ手20人が迫っていると嘘を言って、フィッツジェラルドはグラスを穴に放り込んで逃げた。穴から這い出したグラスは、ホークの遺体にすがりつき、復讐を決意して這いながらフィッツジェラルドを追うが…というお話。

 テーマはかなりシンプルに、「復讐」です。復讐のため、ただひたすら敵を追い続ける、行く手にどんな困難があろうとも、どんな危険があろうとも、執念深く、執拗に追い続ける。その不屈の強い意志が、テーマであり、見どころとなります。
 通常の復讐者との違いは、グラスが孤立した復讐鬼ではなく、人望があることです。熊に襲われ瀕死の重傷を負ったグラスを部隊の者たちが傷を縫い、手当てをし、先住民アリカラ族に追われて仲間が多数殺されて人手が足りなくなってもなお部隊の者たちはグラスを板に載せて運び続けます。もう連れて行けないという事態になっても、隊長は、グラスを1人置き去りにするのではなくホークの他に2人を金を払うと約束してグラスの世話のために残し、必ず死を見届けて埋葬するように指示をします。グラスが生きて戻ると隊長は砦に迎え入れて手当てをし、約束を破ったブリジャーを処罰しようとしたり、フィッツジェラルドの処刑も決意します。グラスの復讐心が周囲にも支持され、共感を呼び、こういった人の助けを得て復讐に突き進むというところが、ユニークに思えました。
 白人と先住民の関係を、アリカラ族を敵の野蛮人と描きつつ、ポーニー族とは取引関係があり、主人公のグラスをポーニー族の妻を持ち、しかもその妻を殺され、ポーニー族との間の子を思うという位置づけで描き、古い時代の西部劇的な先住民描写はしないよというスタンスを見せています。2016年のアカデミー賞が白人偏重と批判されボイコット騒ぎも起こすことを予想してのポーズというわけではないでしょうけれど。
 ディカプリオの凄惨にして陰惨な演技の迫力は評価に値しますが、熊に襲われて右脚は足首があり得ない方向に曲がった状態で、さらには熊に踏みつけられのしかかられているのですから普通に考えれば背骨も肋骨も内臓も無事であるはずがないのですが、傷を縫ったり火で炙る以外の治療は何もないのにいつの間にか普通に歩けたり走れたりしてしまう不死身ぶりの荒唐無稽さと、生理的な気持ち悪さがつきまといます(私は、見ていて気持ち悪くなりました)。ディカプリオ周辺の凄惨さと、雪原/川の流れの風景の鮮烈さの対照が印象的な作品です。

2016年5月 3日 (火)

ズートピア

 肉食動物と草食動物が平和に共存する楽園を描いたディズニーのファンタジー・アドベンチャー「ズートピア」を見てきました。
 封切り2週目火曜日祝日、TOHOシネマズ新宿スクリーン5(184席)午前11時25分の上映はほぼ満席。

 うさぎたちが暮らす農村バニーバロウのニンジン農家に生まれたジュディ・ホップスは、子どもの頃から警察官になりたくて、24歳で肉食動物と草食動物が共存する夢の国「ズートピア」で初めてのうさぎの警察官となった。水牛の署長ボゴは、うさぎには捜査はできないと、ジュディを交通切符係に配置するが、ジュディは14人が行方不明となっている事件の行方不明者の一人カワウソのエミットの妻が警察署を訪ねてきたところに出会い、自分がエミットを捜索すると請け合う。ボゴは反発したが、通りかかった副市長の羊のベルウェザーが後押しし、ボゴは48時間以内に見つけられなかったらジュディが辞職するという条件をつけて認める。エミットの最後の目撃写真を手がかりに、アイスクリーム詐欺をしていたキツネのニックを脅して協力を約束させたジュディは、エミットが行方不明になった夜に乗った車にたどり着くが、運転手は、エミットが突然暴れ出して逃げ去ったと証言し、その後その運転手も突然暴れ出してジュディらに襲いかかり…というお話。

 肉食動物が本能を抑え込んで平和に草食動物と共存する楽園「ズートピア」での、肉食動物の突然の先祖返りと、草食動物の肉食動物への不信、平和共存の基盤の脆さと尊さ、そしてうさぎ(草食動物)のジュディとキツネ(肉食動物)のニックの種を超えた友情がテーマです。
 さらに、娘の安全を願う両親と、夢を追い自立を志向する娘の相克もサブテーマになっています。
 人の善い部分にスポットライトを当て、人を信じること、夢を信じることの尊さをアピールするこの姿勢は、近年のディズニーアニメの真骨頂というべきでしょう。ごく素直に感動できます。
 ディズニーは、金にあかせて他社が育てた様々なシリーズを買い取って儲かりゃいいでしょという姿勢の作品を作って元のシリーズや原作のファンのコア層を失望させるのではなく、この作品のようなテーマを追い続けて欲しいと、切に願うのですが。

2016年5月 1日 (日)

ちはやふる 下の句

 競技かるたに打ち込む千早と幼なじみの新、太一ら高校生となった3人をめぐる青春映画「ちはやふる 下の句」を見てきました。
 封切り3日目日曜日映画サービスデー、新宿ピカデリースクリーン6(232席)午前9時30分の上映はほぼ満席。観客の多数派は、若い(中高生)女性グループと親娘連れ。

 かるたをやめると宣言した新(真剣佑)を訪ね、永世名人だった新の祖父(リリー・フランキー)の死と新の頑なな様子を見た千早(広瀬すず)は、原田先生(國村隼)から今年の全国大会の個人戦に、かつて新に勝てなかったがその後史上最年少でクィーンとなった天才高校生若宮詩暢(松岡茉優)も参戦すると知らされ、自分がクィーンに勝てば新を翻意させられると考えて、クィーン打倒を目指して、左利きのクィーン対策の特訓を始める。真夏の教室で吹奏楽部の練習音に気を散らされ、千早がクィーン対策に心を奪われて多数派の右利きの相手に勝てなくなっているのになおクィーン対策にこだわる様子にキレた太一(野村周平)は、かるた部から千早を追い出す。北央学園への出稽古で、こてんぱんにやられ、須藤(清水尋也)から、北央学園の強さは個人の闘いじゃないと先輩から受け継いだ全国大会の出場校の分析資料を見せられ、自分たちを破った東京代表としての責任を持てと発破をかけられた千早はかるた部に戻り…というお話。

 冒頭、福井の新のところへ向かう千早と太一、例によって眠りこける千早をめぐるギャグカットを置いた後、道すがら千早の手を握ろうとする太一、それに気づかず後ろから自転車で通りかかった新を見つけ驚く千早、千早を見て驚きあぜ道から転げ落ちる新、新を助けようとしてあぜ道から滑り落ちる千早という、マンガが原作ですからそういうことなんですが、いかにもマンガのベタなシーンがあり、あぁこういう作品なんだと印象づけられ、基本的にその印象が最後まで持続する感じです。
 パート2に当たる「下の句」のテーマというか、キーメッセージは、上の句から続く「1人じゃない」、「チームの絆」に加えて、新が太一の問いかけに対してアドバイスした、行き詰まった時には、かるたが一番楽しかった時のことをイメージするということにあります。これって、もしや…、私のようなハリ・ポタオタクには、ハリー・ポッターが宿敵ともいうべきディメンター(吸魂鬼)を退けるための呪文「エクスペクト・パトローナム!」を唱えるときに、これまでで一番幸せだった思い出を思い浮かべることで呪文の威力が増すというのと同じ…
 全くの独習で史上最年少クィーンに上り詰めた若宮詩暢、異次元の強さなんだそうですが、今ひとつ鋭さが感じられません。どちらかというと、原宿限定「ダディ・ベア」のキャラクターとか、雪だるまの絵のTシャツとか、独特のヘタかわキャラ志向に癒される感じです。
 下の句の公開記念舞台挨拶の席上、原作者の手紙で続編の話が書かれていて主演の広瀬すずが驚いて感極まったというようなニュースが流れましたが、作品自体の中で、いかにもまだ終わらないぞ、続編やるぞってメッセージが濃厚に示されています。

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