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2014年10月12日 (日)

海を感じる時

 1978年、当時18才の中沢けいの群像新人賞受賞作を、30余年を経て映画化した映画「海を感じる時」を見てきました。
 封切り5週目日曜日、全国6館東京で2館の上映館の1つテアトル新宿(218席)午前10時45分の上映は、2~3割の入り。市川由衣のフルヌードばかりが話題になる中、観客の多数派は男性一人客ですが、意外に女性客もけっこういました。

 父が早死にし母子家庭に育った中沢恵美子(市川由衣)は、高校の新聞部の先輩高野洋(池松壮亮)に部室で、君が好きなわけじゃない、ただキスをしてみたいだけだとキスを迫られ、応じてしまうと、さらに体を撫で回されるが、チャイムが鳴ると洋は手を止め授業に出ろよと言い捨てて出ていく。恵美子が喫茶店に洋を呼び出し、ずっと好きだったと告白しても、洋は女の人の体に興味があっただけ、君じゃなくてもよかった、君といると体を求めてしまう、もう会わない方がいいとつれない対応に終始する。その後も会う度にキスをし体を撫で回しながら冷たい態度を取る洋を、恵美子は追い続け、必要としてくれるのなら体だけでもいいと関係を迫る。月経が遅れ、妊娠したみたいと告げた恵美子に、洋は金は出すと答え、産みたいという恵美子に対し、ダメだと突き放す。恵美子は、大学生となり東京に行った洋の下に通い、洋が送り返してきた恵美子の手紙を見て、恵美子と洋の関係を知った母(中村久美)は恵美子を詰り、受験にも失敗した恵美子は家を出て東京で花屋で働きながら洋との関係を続けるが…というお話。

 つれない男から冷たくあしらわれながら唯一男から受け入れられる体・セックスのつながりで追い続けていた女が、生活上自立し、男との関係を相対視しセックスなんてたいしたことじゃないと開き直ってしまうことで、力関係が逆転する、男女関係の機微がテーマであり、ストーリー上の見どころと思えます。
 ただ、この身勝手な冷血漢、鬼畜のような男との関係がこのような展開を見せるのは、ひとえに、この男に他の女性が現れなかったから、性欲故にこの女との関係を絶つことができず、この女抜きでは生活が成り立たなくなってしまったことがこの男の弱点となったためと考えられます。
 体だけ、誰でもいいと言われながら慕い追い続ける女、男を呼び出してたどたどしく告白する喫茶店のBGMが「まちぶせ」(音量が小さめだったのではっきりわからなかったけど、たぶん石川ひとみじゃなくて、三木聖子)という気まずい場面にも象徴される不器用でイタイ女と、レトロなタッチの台詞でクールを気取りながら中身もなくもてない男の、どこかかっこ悪い青春グラフィティである故に成立した作品という感じです。

 話題の市川由衣のフルヌード、繰り返されるセックスシーンを見ても、ほとんど興奮を覚えません。
 市川由衣の裸体は、冒頭の、ポスター等にも採用されている場面の、あえて腕を寄せて前屈みの姿勢を取ることでことさらに鎖骨を浮き出させた、実態以上にやつれたカットの印象を引きずり、その後のふつうの姿勢の映像でも今ひとつ肉感を感じません。同じ体でももっと肉感的に、エロスを感じさせることは可能なのに、あえてその素材を魅力なく見せているのかと思えます。ラスト近くの公衆浴場のシーン、他の客が全くいないのも違和感がありますが、市川由衣の座り方、あんな風に椅子も使わずにタイルに直にべちゃっと座るの、気持ち悪くないんだろうか。ヌードに興奮するよりそういうことの方が気になってしまいました。私がもう枯れてきている印?
 セックスシーンも、全然楽しくもうれしくもない感じです。市川由衣だけじゃなくて、池松壮亮も、行きずりの中年男(三浦誠己)も、あまり気持ちよさそうじゃない。それに、2人とも、あまりに早い。セックスシーン自体が見せ場じゃない(ポルノ映画じゃない)とはいえ、えっ、もう?と思う。たいして気持ちよくもないセックスなんぞにどうしてそんなにこだわってるの?というメッセージを浮き立たせる意図なんでしょうけど、そういうものなのか、ちょっと寒々しい思いがしました。
 ラスト近く、行きずりの中年男とのセックス(それも寒々しいんですが)を知らされて、恵美子を罵った上でレイプまがいに(恵美子が抵抗はしませんが、実質はレイプと言ってもいいでしょう)恵美子を犯して立ち去った洋を、恵美子がいつもとおんなじじゃないと評するのが、辛辣でもあり、哀しい。これが恵美子の悟りでもあるわけですが、もっといい関係/いいセックスがあるというメッセージもあって欲しい。

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