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2014年6月 8日 (日)

美しい絵の崩壊

 親友の息子とできてしまう母たちの戸惑いと喜びを描いた映画「美しい絵の崩壊」を見てきました。
 封切り2週目日曜日、全国4館東京で2館の上映館の1つヒューマントラストシネマ有楽町シアター1(162席)午前10時の上映は3割くらいの入り。

 オーストラリアの海に面した家に住む幼なじみの親友ロズ(ロビン・ライト)とリル(ナオミ・ワッツ)は、ともに10代の息子と暮らしていた。ロズの夫ハロルド(ベン・メンデルソーン)がシドニーの大学で演劇専任教師の職を得てロズと息子トム(ジェームズ・フレッシュヴィル)にともにシドニーで暮らそうと話して先にシドニーへと旅立った夜、酔いつぶれたトムを介抱するためにロズのうちに泊まったイアン(ゼイヴィア・サミュエル)は、夜寝室を抜け出してロズの部屋に行き口づけをし、ロズもこれに応じる。深夜に台所に行きロズが脱いだジーンズを手にイアンの寝ている部屋から出て来たのを見たトムは事情を察し、直ちにリルの元を訪ねて泊まりリルのベッドで寄り添い朝起きたリルはトムと絡み合う。シドニーに家を確保して妻子を呼びに来たハロルドは、ここを離れないというロズに追いやられる。2年が過ぎ、演出家となって時々ハロルドの元を訪ねて仕事をするトムは、若き女優メアリー(ジェシカ・トヴェイ)と2股をかけたのちメアリーと結婚する。落ち込むリルを慰めながら、ロズは2人で耐えていこう、私もイアンとは終わりにすると宣言するが…というお話。

 予告編を見ていた段階では、言い争うシーンもあるので、片方の母と相手の息子ができてしまいそこから友情に亀裂が入り…という展開と予想していたのですが、あっという間に両方ともできてしまいますし、リルの夫でイアンの父テオが早くに事故死しているので、リルとトムができるのかと思ったら、人妻のロズとイアンが先にできちゃうというのも予想外でした。
 親友の息子とできてしまったという戸惑いと苦悩が、一応はテーマなのだと思うのですが、あまりそこで倫理的に苦悩するシーンがなくて、むしろ老いてもなお若いイケメンが夢中になる魅力的な私という自己陶酔と、いずれは若い美しい娘に男を奪われるという焦燥感に揺れるところでの苦悩の方が優越している印象です。

 ロズに拒絶されるなどしてうまく行かない場面で、イアンが最初にはハロルドにすべてあんたのせいだと毒づき、のちにはロズにすべてあんたのせいだと罵ります。ロズとイアンの関係は、イアンが夜にロズの部屋に行ってキスしたところから始まります。まぁ人妻のロズがそこで応じるべきではなかったでしょうし、第三者が大人のロズがたしなめるべきだったと評価するのはわかります。でも、当のイアンが、自分から仕掛けたのに、すべてロズのせいって、普通言えるでしょうか。ましてや、ハロルドに対して、ハロルドの留守を狙ってロズに言い寄った間男が、あんたのせいだなんて、一体どういう神経してたらそんなこと言えるんだろう。本当に、イケメンというだけの空っぽ男ぶりに唖然としました。
 映画を見た後、原作(ドリス・レッシング「グランド・マザーズ」)を読むと、ハロルドがロズと別居したのは息子たちが10歳くらいの時で、ハロルドとロズの離婚はイアンとロズの不倫とは関係がなく、ロズとイアンの関係は、その場面は描写されていませんが、むしろロズが誘ったことが示唆されています。また、イアンがハロルドに対してすべてあんたのせいだと言う場面はありません。そうであれば、イアンがロズにすべてあんたのせいだと罵る場面も比較的素直に受け取れます。もっとも、イアンの子供じみた身勝手な空っぽぶりは、原作でも十分に見られるのですが。

 終盤で、それぞれに若い女と結婚して娘を連れてロズとリルの元を訪ねたイアンとトムが海辺ではしゃぎ、幼い娘たちがロズとリルをおばあちゃん大好きと慕い、ロズとイアン、リルとトムの関係を知らない妻たちが微笑ましくそれを見守るというシーンがあり、私にはここが見せ場に思えました。隠された過去を乗り越えた/関係を隠して成り立つ平和の一面微笑ましい一面おぞましい様相が象徴的です(原作では、最初に破局の場面が置かれているので、終盤に登場するこのシーンは軽く流され、また結果が先に示されているのであまり緊張感はありません。映画での独自の見せ場と言えるでしょう)。
 スリリングでもアップテンポでもないのですが、さまざまな意味で予想を裏切る展開で、小さな驚きが持続しました。

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