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2014年3月29日 (土)

ダラス・バイヤーズクラブ

 HIV陽性で余命30日と宣告されたカウボーイが、製薬会社・政府と闘いながら未承認薬を売りさばく社会派映画「ダラス・バイヤーズクラブ」を見てきました。
 封切り6週目土曜日、ヒューマントラストシネマ有楽町シアター1(162席)午後0時10分の上映は3~4割の入り。

 1985年、テキサスでロデオと賭博、酒、ドラッグ、女に溺れる日々を送っていたカウボーイのロン・ウッドルーフ(マシュー・マコノヒー)は自宅にしているトレーラーハウスで倒れた。後日電気技師として勤める作業場で機械に足を挟まれた同僚を助けようと電源を切るときに気を失ったロンが病院で目覚めると、医師は血液検査の結果HIV陽性と判断され余命は30日だとロンに宣告した。ロンはその病院で製薬会社が臨床試験中の未承認新薬AZTを職員から横流しを受けて服薬していたが、管理が厳しくなり、職員はメキシコの医師を紹介する。体調が悪くなったロンは藁をもつかむ思いで紹介されたメキシコの医師を訪ねたが、その医師はAZTの処方を拒否し、AZTには重篤な副作用がある、むしろ副作用のほとんどない薬が多数あるとロンに教えた。医師の指示に従い未承認薬の服用を続けるうちすっかり回復して体調がよくなったロンは、この未承認薬をアメリカに持ち込み、エイズ患者たちに売りさばくことにした。密輸した未承認薬を売れば重罪になると注意されたロンは、会員制の「ダラス・バイヤーズクラブ」を設立し、会費として月400ドルを徴収し、会員には薬を無料で配るという体裁を取った。入院中同室だったトランスジェンダーのレイヨン(ジャレッド・レト)と組んで入院患者やエイズ患者支援団体にAZTの副作用を声高に指摘し、未承認薬の効果を語るロンに感化されて、エイズ患者はダラス・バイヤーズクラブに列をなし、病院の医師と製薬会社の知らせを受けた政府はロンの未承認薬を押収し罰金を言い渡した。ロンは弁護士に政府と製薬会社に対する裁判を起こさせるが…というお話。

 1980年代の南部のエイズとゲイに対する強い偏見の下で、HIV陽性と余命30日を宣告されて孤立し絶望的な状況に陥ったロンが、メキシコで医師免許を剥奪されながら情熱を持って地域医療に当たる研究熱心な医師の示唆と知恵に支えられながら、当時の医学的見解や政府と製薬会社の姿勢と主張に反して、未承認薬やビタミン、亜鉛、アロエなどで生きながらえて回復し、それらの未承認の民間療法ながら効果があるものの輸入・販売を禁止する政府と闘う姿は感動的です。ロンは善人とは言い難いですし、やっていることは法律違反ですし、消費者側の弁護士の目で見れば医薬品まがい・健康食品を高額で売りつける悪徳商法とさえ評価しうるものですが、無害なものを規制し重篤な副作用がある新薬を副作用に目をつぶって承認する政府と闘う姿勢は、爽やかです。ましてや、メキシコの医師の情熱はすばらしい(私は実はこのメキシコの医師の姿に一番感動してしまったのですが)。このあたりは、虐げられ窮地に追い込まれた者たちの権力との闘いを描いた映画ともいえます。
 病に倒れ、余命30日を宣告され、新薬AZTにすがり、メキシコで療養して新事実を知るに至る過程での、マシュー・マコノヒーの表情の変化と、ダラス・バイヤーズクラブを始めた後に何度か担当医イブ(ジェニファー・ガーナー)を訪ねて協力を求める際の爽やかに変化する表情が実にいい。アカデミー主演男優賞納得の1本です。

 未承認の薬の販売を禁止し、生命の危険がある患者には未承認の薬の購入を許すが医師の処方箋を必要とするという政府の決定は、法律家の議論としては、これを違法ということはかなり無理があるように見えます(少なくとも薬効があると表示して売るには)。それでも裁判を起こせと言われればとにかく起こすのが、アメリカの弁護士というところでしょうか。
 敗訴したら、サンフランシスコでゲイとエイズに理解のある裁判官でもう一度やれって、アメリカならでは(アメリカで現にそういうことができるのかどうかは、私はわかりませんが)。日本の弁護士としては、そういうことができるなら面白いなとは思うのですが。

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映画「ダラス・バイヤーズクラブ」 昨年の「マジック・マイク」では華麗な肉体を魅せてくれたマシュー・マコノヒー君。 このまえの「ウルフ・オブ・ウォールストリート」では、個性的な『資本主義』演技。 なんとこんどは21キログラムの激痩せ。 野卑なテキサス男...... [続きを読む]

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