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2013年8月 4日 (日)

スタンリーのお弁当箱

 インドの不遇な子どもと学園生活を描いた映画「スタンリーのお弁当箱」を見てきました。
 封切り6週目日曜日、現在全国で10館東京で3館の上映館の1つヒューマントラストシネマ渋谷シアター1(200席)午後1時15分の上映は5割くらいの入り。

 作り話好きの陽気な少年スタンリー(パルソー:新人)は4年F組の人気者だが、家庭の事情でお弁当を持ってくることができず、昼休みは1人で水を飲んだりお弁当を買ってくると嘘をついて教室を出て時間つぶしをしていた。クラスの仲間たちは、スタンリーを気遣ってお弁当を分けてあげていたが、それを見つけた意地汚い国語教師ヴァルマー(アモール・グプテ:監督)は4年F組でいつも贅沢な料理を詰めた大量のお弁当を持ってくるアマン・メヘラ(ヌマーン)から自分が弁当を分けてもらうために邪魔になるスタンリーに腹を立て、スタンリーに対し人に弁当をたかるなと叱責した。アマン・メヘラたちクラスメイトはスタンリーをかばって、ヴァルマーを避けて教室外でお弁当を分け合って食べていたが、とうとうヴァルマーに見つかり、アマン・メヘラの弁当を分けてもらえずに苛立っていたヴァルマーはスタンリーに対し弁当を持ってこない奴は学校に来る資格がないと怒鳴りつけ、その日からスタンリーは学校に来なくなり…というお話。

 家庭の事情でお弁当を持って来れない子どもという形で象徴される恵まれない子どもが、クラスメイトの友情に支えられながら、困難を乗り越えるというテーマの作品です。
 お弁当を持って来れず友達のお弁当を分けてもらっているスタンリーに対して、裕福な家の子アマン・メヘラがスタンリーをいじめることもなくまた憐れむというスタンスでもなく、一緒に食べようと言い続けるあたり、やや非現実的にも見えますが、救われる思いです。子どもたちがみんな性格がよくて明るいいい子たちなのは、制作者側の願望と配慮もあるでしょうけど、見ていて気持ちがいいです。
 家庭の事情でお弁当を持って来れない子どもとその子どもに惨めな思いをさせず子どもたちの一体感を育むためにも給食をという運動は、日本でも経験したことで、アレルギーや食の安全問題と絡めて学校給食が批判的に捉えられがちな今は忘れられがちではありますが、格差社会の格差を拡げたい人々が圧倒的な力で政権を握ってしまったことと考え合わせると他人事ではない気がします。
 ラスト直前で、陽気に過ごしているスタンリーの境遇が明らかにされ、涙を誘われ、この問題の深刻さを考えさせられます。

 子どもからお弁当を取り上げて食べる教師ヴァルマー、それもそのために邪魔なスタンリーに人にたかるな、弁当を持ってこないなら学校に来る資格がないと怒鳴るヴァルマー。自分のことを棚に上げ、顧みて他を言うの典型ですが、小さな権力を持つ中間管理職や小役人の権力濫用を象徴しています。子どもから弁当を取り上げるという非現実的で滑稽な例えですが、中間管理職や小役人の権力濫用、セクハラやパワハラ、役人の水際作戦と捉え直せば、私たちの周りで日常的に見られるテーマです。
 左利きのスタンリーが隣の席の右利きの子どもとノートをとる度に肘が当たると言っていつも喧嘩しているのを見て、スタンリーに左利きを直して右で書けと命じるヴァルマー、喧嘩両成敗で2人とも廊下で立ってなさいと命じるアイヤル(ディヴィヤ・ジャグダレ)、利き腕同士が当たるなら席を交代しなさいというロージー(ディヴィヤ・ダッタ)と、同じ問題に対して教師の問題解決能力の違いを見せているシーンに象徴されるように、教師の資質・能力の違いが強調されています。
 そういった個人の資質の問題は、確かにあちこちであるのですが、身近な権力者たちの権力濫用問題をすべて個人の資質の問題に帰してよいのかは疑問を感じます。ヴァルマーにしても、どうして彼が自分の弁当を持ってくることができずに、子どもから取り上げるに至ったのか、そちらにも光を当てる必要があるようにも思えるのですが。

 そういう問題提起をしてすぐにこういうのも何ですが、ロージー先生、子どもへの対応も態度もよく、優しくて笑顔もチャーミング。特に年少の頃、こういう先生に当たりたい、子どもの担任はこういう先生がいいなと思ってしまいます。
 この作品でほぼ唯一(終盤でもう1人悪役が登場しますけど)の悪役ヴァルマーを演じたのがこの作品の監督で、実生活でスタンリーの父親というのは、ちょっとビックリします。

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