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2013年5月 5日 (日)

ジャッキー・コーガン

 ブラッド・ピット主演最新作「ジャッキー・コーガン」を見てきました。
 封切り2週目日曜日・GW後半4連休3日目、シネ・リーブル池袋シアター2(130席)午前11時30分の上映は1~2割の入り。

 闇社会で開かれている賭場で、マーキー(レイ・リオッタ)が胴元の時、賭場に強盗が入り客から金を奪った。その後賭場は閉鎖されていたが、再開し、マーキーは仲間に実は自分が仕組んだと話したが仲間たちは自分が損をしたわけではないので放置した。その話を聞きつけたリスことジョニー(ヴィンセント・カラトーラ)は次にマーキーが胴元の時に強盗に襲撃させれば闇社会の連中は犯人はマーキーと思い込むと踏んで、若いフランキー(スクート・マクネイリー)とラッセル(ベン・メンデルソーン)の2人に賭場を襲わせる。マフィアのボスディロン(サム・シェパード)は犯人を抹殺するために殺し屋のジャッキー・コーガン(ブラッド・ピット)を雇うが…というお話。

 見終わって、これほどまでに登場人物の誰一人にも共感できない映画があっただろうかと呆然としました。
 ジャッキー・コーガンは「その男は優しく、殺す」(公式サイトのメインキャッチコピー)のではなく、単に命乞いをされるのがめんどうだから不意打ちでさっさと殺すというだけ。顔見知りの人間は別の殺し屋にやらせようとするし、指紋もきちんと拭き取る、めんどうなことはいやで捕まりたくはないという、そういうところには神経を使う、とても大人物とはいいがたい人間味のない金にしか興味がない殺し屋。本人は気取っているようだけどかっこよくも見えないただの不機嫌なヤクザレベル。それ以外は、マフィアの中間管理職の神経質でせこい連絡役、賭場で強盗を仕込んで客の金を奪い今回はそれをまねされて再犯を疑われる賭博の胴元、賭場強盗の経緯を知って胴元に嫌疑を押しつけて自分は助かると踏んで強盗を計画する人物、それに雇われた実行犯、ジャッキーに殺人を依頼されてホテルで遊びほうける人物など、ジャッキー・コーガンよりさらに共感の余地もないレベルばかり。
 予告編冒頭に「2013年 映画史に刻まれる、新たな殺し屋の誕生」って出ています。こういうの誰が作るのか、映画興行関係者というのは恥というものを知らないのかとしみじみ思います。アメリカで2012年11月末に公開され、公開初週末の興行成績がやっとこ6位、翌週10位でその後2度とベスト10にも入れず、ブラッド・ピット主演映画ワーストの呼び声の高いこの映画に日本公開に際してこういうキャッチをよくつけるものだと思います。
 映画の最初の段階で、制作会社やプロダクションのクレジットのくどさに呆れかえりました。近年、制作関連会社のクレジットが3つ4つは当たり前になってきていますが、それでも5つを数えることは少ないと思います。この映画では7つか8つ続きます。それを見た段階で、つまり映画本編が始まる前に既にこの映画は観客のために作られた映画ではないと、少なくとも制作者が観客のことなど全く考えていないことを確信しましたが、見終わって改めてやっぱりそうだったなぁと納得しました。

 映画全編を通して、2008年のアメリカ大統領選挙が背景に登場します。ラジオでブッシュ政権の財政政策に関するナレーションがかぶり、政治家たちの演説や言い訳が続き、オバマの CHANGE の広告が映り、後半はオバマ演説が背景に溢れかえります。それを背景音に、ブラッド・ピットが、オバマ演説の言い回しを皮肉りながら、アメリカは国じゃないビジネスだとまくし立てます。制作者が少なくともオバマが嫌いなんだなということは、よくわかる映画です。アメリカの当時の政治ニュースに疎い私には共和党側も皮肉られているのかはちょっとわかりませんでしたが。どちらにしても、2012年制作のこの映画は、アメリカ国内向けには、その種の政治的メッセージが含まれているのでしょうけど、日本人にはあまり関心を持てないしまたうまく読み取れないと思います。アメリカ向けにしても、公開が大統領選挙の投票(2012年11月6日)終了後というのでは、腰砕けで時季外れだと思います。その結果、アメリカでも興行成績は惨憺たるものだったわけですが。
 アメリカ社会の描写という点で見ると、ジャッキー・コーガンが呼び寄せた殺し屋のミッキーが3日間にわたり娼婦に奉仕させた挙げ句に支払ったのが100ドルとか、ジャッキー・コーガンの殺人の報酬が1人1万ドル、ジャッキー・コーガンがそれに文句を言う言い値も1万5000ドルという、価格破壊、自営業の厳しさなんてものが、ひょっとしたら着目ポイントかも。娼婦への100ドルは、単にジャッキーのお友達のミッキーが人の弱みにつけ込む酷い奴だというだけのこととも思いますが。

 さらにいうと、アメリカでのタイトルは、"Killing them softly"。 原作(小説)は "Cogan's trade" というそうですので、映画のタイトルは制作側で独自につけたものということになります。このタイトルを聞けば、だれでも日本では「やさしく歌って」と呼ばれる(というよりは、ネスカフェのCMソングとして知られる)1973年に大ヒットした "Killing me softly with his song" を想起します。内容的には全然関係ありません。このあたりもあやかり商法的でいやな感じがします。日本語タイトルが、「ジャッキー・コーガン」とされているのは、原作小説の線に戻したもので、少しホッとします。まぁ、日本では「やさしく歌って」の知名度(メロディの知名度はかなり高いですが曲名の知名度は…)とそれに引っかけるのが難しい(「やさしく殺す」では引っかけていることがわからないし、「やさしく殺して」ではブラピが主語じゃなくなりますし)ということが考慮されただけかもしれませんが。

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