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2013年3月20日 (水)

プラチナデータ

 完璧なはずのDNA捜査システムで、システム開発者が殺人事件の犯人と名指しされるミステリー映画「プラチナデータ」を見てきました。
 封切り5日目祝日の水曜日、TOHOシネマズ六本木ヒルズスクリーン7(644席)は2~3割の入り。観客の多数派は若い女性(レディースデイ効果もあるとは思いますが)。

 近い将来の日本、警察庁は、ほぼ完璧なDNA捜査システムを構築し、国民にDNAの提供を義務づける法律の成立を待っていた。しかし、時々DNA捜査システムでも照合できないケースがあり、DNA法案反対運動家3人が銃殺されて肋骨を1本抜き取られるという連続殺人事件でも、犯人のものと思われる遺留物のDNAは照合できずNF( Not found )13と称されていた。数学の天才的な能力を持ちDNA捜査システムのプログラムを書いていた蓼科早樹(水原希子)とその兄が、居住していた新世紀大学病院8階の居室で同じ手口で殺害され、早樹の爪に残っていた皮脂のDNAがシステム開発責任者神楽龍平(二宮和也)のものと判断された。その解析を自分で行った神楽は逃走し、新世紀大学の監視カメラ映像とその偽装工作から神楽の犯行と判断した警視庁捜査1課の浅間刑事(豊川悦司)は、警察庁が極秘裏に準備した監視カメラ追跡システムを駆使して神楽の現在の動向を把握する志賀所長(生瀬勝久)の情報を元に神楽を追うが…というお話。

 科学捜査システムと警察組織をめぐるミステリーとドラマと予測される前半から、神楽自身の二重人格、父との関係、そして母との関係という内心と生育歴のどろどろしたというかおぞましいエピソードへと転換していく後半への落差、それに応じて慇懃無礼というか小生意気で粘着質の官僚から情緒的というか情緒不安定な青年へと演技幅を変えていく神楽役の二宮和也の姿が見せ場といえますが、あまりすっきりしない感じが残ります。
 後味という点では、ラストシーンのもったいぶり方は、これだからアイドル主演の映画は見たくないんだよと思わせてくれます。ミステリーの道具立てとして撮っておきたいカットなのだとは思いますが、ああするのなら何か別のシーンを考えた方がいいでしょうし、そうでないとしても最後のアップを顔じゃなくて手にすべきだと思います。

 神楽の逃げ方は、かなり無理な感じがします。バイクでああいう状況で逃げ切れるとは思えませんし、映画だからということであれば、それなりのカーアクションで振り切るべきで、何の工夫もなくだらだらと走り続けて、しかも一旦止まってそれで追跡者も遠巻きに止まってそのまま待ってるとか、何これ?と思います。
 浅間刑事の言動も、それこそ一介の警部補がそんな権限あるはずないと思うことが続きます。浅間がやれば何でも通るみたいな話なら、幹部サイドの警察組織がどうだとかいう台詞はやめた方がいいように思えました。

【原作を読んでの追記】(2013.5.22)
 映画を見た後で原作を読み、映画では相当な設定の変更がなされていることを知りました。
 原作では神楽とリュウをつなぐ重要な役割を果たすリュウの恋人スズランが、映画では登場しません。これは、単純に映像化しにくかったこと、映画化に当たって神楽の人物像を深めるよりもアクションの要素を重視したことからかと思われます。それ自体は、十分ありうる選択でしょう。
 NF13の性別を変更し、その結果、連続殺人の目的と犯行態様を変更したことは、あまり理解できません。原作の犯行目的もそれほど説得力があるとはいえませんが、映画で採用された遺体から肋骨を一本抜くというアイディアが映画の中でうまく活かされているとも思えませんし、その目的がうまく説明されているとも思えませんでした。また性別を変更したことで描きたかったと思われる部分が映画の中でうまく描けているとも思えませんでした。
 神楽がらみの部分では、原作に比べて神楽の逃走シーンが長く派手になっているのが目につきます。防犯カメラによる追跡システムからの逃走も、バイクでの逃走も、原作では、ほんの少しなのに、映画では大きな見せ場にしようというもくろみが強く感じられます。しかし、それがアクションシーンとして成功しているとは思えず、特にバイクでの逃走シーンなどこのレベルのアクションを長々と見せる意図が理解できませんでした。また、神楽のDNAが検出された検体も、原作では毛髪なのに、映画では被害者の爪から検出された皮脂。ふつう被害者の爪から加害者の皮脂が検出されるのって絞殺・扼殺死体でしょ。絶対あり得ないとは言いませんが、銃殺死体で被害者の爪から加害者の皮脂が検出されるって不自然だなと、映画を見たとき思ったんですが、これ、何のために原作の設定から変更したんでしょ。映画のラストシーンまで考えても理解できないんですが。

 原作についての感想記事はこちら

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DNA「プラチナデータ」展開は 智慧がないなあ日本映画は 映画「プラチナデータ」 2017年、最先端のDNA捜査。検挙率100%、冤罪率0%だとさ。 敏腕刑事と、天才科学者。 どちらも格好いいという設定なんだろうけど、気取っているようにしか見えない。 「この愛さ...... [続きを読む]

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