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2012年8月11日 (土)

おおかみこどもの雨と雪

 おおかみおとこと愛し合い2人のおおかみこどもを育てることになった母とそのこどもたちの成長と選択を描いたアニメ「おおかみこどもの雨と雪」を見てきました。
 封切り4週目土曜日、109シネマズ木場シアター4(86席)は2~3割の入り。

 父を亡くし奨学金を得てバイトを掛け持ちする苦学生の花は、働きながら授業を受けに来るニセ学生と恋に落ちたが、その相手はニホンオオカミを祖先に持つおおかみおとこだった。その告白を聞いても心変わりしなかった花はおおかみおとこと結ばれ、雪の日に生まれた雪と雨の日に生まれた雨の2人の子どもに恵まれるが、雨が生まれてすぐおおかみおとこは近所の川で死体で発見された。花は子どもたちを独りで育てることを決意したが、感情が高ぶるとオオカミになってしまう子どもたちの鳴き声に隣人や家主から追い立てられ、田舎の廃屋に移り住む。ひっそりと人目を避け、子どもたちが山野を自由に駆け巡れるようにと考えた花だったが、独り畑作の試行錯誤を続ける花の姿に周囲の人々が手助けをするようになり、花たちは次第に村人に溶け込んでいく。雪は学校に通い、人間の少女として生きていく決意を固め、内気で学校に慣れない雨は学校に行かず山に通い続けるが・・・というお話。

 おおかみこどもの子どもたちが人間として生きるか、オオカミとして生きるかの選択が、どちらでも可能なようにと田舎の廃屋に居を構えた花が、子どもたちの選択を見守り、子どもたちは自ら選んだ道を歩み自立していくという、人生の選択と、子どもの自立・親離れのあり方がテーマになっています。
 親からすれば、12歳の娘と10歳の息子の自立・親離れは早すぎて、たぶん親の方が子離れできないだろうと思える展開ですが。

 花に、花のようにいつも笑顔でいて欲しい、そうすればどんなことでも乗り越えられるといい、若くして死んだ花の父親、おおかみおとこでありながら(仕事は力仕事ですけど、また狩りはしますが)家庭内で暴力的な要素をまるで見せずやはり若くして死んだおおかみおとこと、2代続けて父親は早く死んで不在となり、生前においても強圧的指導的要素を見せない、家父長的色彩の払拭された家族構成が設定されています。
 登場人物の中では、韮崎じいさんだけが頑固親父で父権的なイメージですが、その韮崎においても農作業については一方的な指示・命令をしますが、それ以外の家庭生活や生き方などには一切口を挟みません。
 そういう設定が、花、あるいは雨と雪の自由な選択と早期の自立につなげられているのだと思います。

 他方において、自由奔放におてんばに育った雪(とても元気でかわいい)が、小学校に入るや「アオダイショウを腕に巻き付けて喜ぶ女の子などいない」「小動物の骨や爬虫類のコレクションを喜ぶ女の子などいない」と学習しておしとやかな少女になっていく姿、内気で引っ込み思案だった雨が山の先生から学んで山で動物たちを束ねて雄々しく生きていく姿は、「そうあれ」と露骨にいってはいませんが、男らしさ・女らしさの枠へのはめ込みの図式が見えてげんなりとしました。
 雪に与えられるのは、オオカミとして生きるか、人間として生きるかの選択肢だけで、人間として生きるという選択肢の中で自由に活発に野原を駆け巡り世間からは「男の子みたい」「男子顔負け」といわれるような少女として生きるという道は頭をよぎることさえありません。終盤で草平がバスケットボールをする姿をコートサイドでただ見ている雪の姿は象徴的です。山村の1学年が10人くらいしかいない小学校の6年生が、男子がバスケットボールをしているとして、女子はコートサイドで黙ってみてるって、むしろ不自然でしょう。
 父権的なシンボルの不在とあわせて、昔のような上から押しつける男らしさ・女らしさではなく、子どもが自分の意思で自由に選択して受け入れるという、より洗練された見る者に受け入れやすい男らしさ・女らしさへの順応モデルが提示されているものと思います。

 雨と雪の選択が、自ら選んだものでありながら、今ひとつ2人の表情に明るさや前向き感が乏しく、どちらかというと宿命的な感じで悲壮感の方に近く感じられるのも、少し後味が悪いところです。人生の選択としても、親は干渉しなかったとしても、苦渋の選択しかないということでしょうか。それは現実社会を反映しているともいえますが、あとあと線量計を隠して線量をごまかしながら原発で働くのも人生の選択なんて方向に後押しすることにならなければいいのですが。

 予告編で見る元気で伸びやかな映像に期待して見に行った者としては、残念な印象が残りました。

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