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2011年6月12日 (日)

ヤバい経済学

 現代社会の通説や建前を疑ってベストセラーになった”Freakonomics”を映画化した「ヤバい経済学」を見てきました。
 封切り3週目日曜日、全国5館、東京2館の上映館の1つ新宿武蔵野館の午後3時45分の上映は7割くらいの入り。

 映画は原作本の著者の大学教授とジャーナリスト2人の対談形式で進み、不動産業者と顧客の利害対立、人生に対する名前の影響、大相撲の八百長と日本の警察の殺人事件捜査、アメリカでの80年代末からの犯罪率減少の原因、高校生に勉強させるためにインセンティブは効果的かという5つのテーマが論じられます。第1のテーマは、30万ドルで売りに出した自宅に29万ドルの買い手が現れた、不動産業者は先のことはわからないからと確実な29万ドルでの売却をアドバイスし手数料は売却額で決まるのだから少しでも高く売りたいが顧客のことを考えて進めているという、信じてよいかという問題。不動産業者が売却を延ばして売却価格を1万ドル上げたとしてもそれによって増える手数料はわずか150ドル、だから不動産業者は早く売って次の仕事をした方がいいから売却を勧めている、もし不動産業者が自分の家を売るのなら30万ドルの買い手が現れるまで待つ。第2のテーマは、名前自体よりも子どもの将来を考えていい名前を付けようとする親の元で育つか、子どもの将来に無関心な親の元で育つかの方が影響が大きいが、多数の企業にまったく同じ履歴書に名前だけを変えて送りつける実験をしたら黒人らしい名前で出した場合は白人らしい名前で出した場合より連絡が少なく就職できるまでの期間も遅くなった。第3のテーマは、日本人は倫理観が強く不正は少ないと考えられているが、大相撲では7勝7敗の力士が同クラスの力士と対戦した時の勝率が75%もありしかも同じ組み合わせの次の対戦では結果が逆になっていることから八百長が行われていることは明らかだし、日本の警察の96%もの殺人事件検挙率は犯人がすぐにわからない事件を殺人事件扱いせずに死体遺棄事件として処理しているから。80年代末からの犯罪率の減少はニューヨークだけじゃなく全米の傾向だしジュリアーノの前から減少しているから重罰化や軽犯罪検挙の成果ではなく、原因の約半分は中絶自由化で望まれない(従って親から関心を向けられなかったり虐待されて育つ)子どもが劇的に減ったことが20年後に効いてきたため、現に1973年の中絶を合法化した最高裁判決よりも3年早く自由化していた州はいずれも3年早く犯罪率が減少している。高校生に成績が上がったら賞金を出す実験をしてみたら、成績が上がった生徒は5~7%、効果は見られるがかけたコストには見合わない・・・というようなお話。

 全体を通じたテーマはインセンティブと因果関係。インセンティブは現実に人を動かしているが、しかしインセンティブで人を動かそうとしても効果は十分ではない。因果関係は、常識や建前とは違っていることが多く、統計的にきちんと論証すべき。というような教訓が得られる映画です。私には、アメリカの犯罪率減少が、政治家やマスコミが言いたがる厳罰化や軽犯罪の検挙(一時一世を風靡した「割れ窓」理論)の成果ではなく、中絶自由化の効果という話が、意外性もありまた説明されるとなるほどと思え、一番興味を引かれました。全体として、常識・通説を疑えという姿勢が売りで、こういう原作本が400万部超のベストセラーになったというのは、さすが。
 大相撲の八百長問題を、今年になってからではなく、週刊ポストが報じていた頃にその材料で断言しているところがすごい。2011年になって力士による野球賭博事件の捜査で押収された力士の携帯メールで八百長の交渉が行われていたという明白で言い訳の余地ゼロの動かぬ証拠を突きつけられるまで、八百長は存在しないと言い続けてきた(今でも「八百長」じゃなくて「故意による無気力相撲」なんだとか)相撲協会の言い分が通って、日本の裁判所が八百長の事実が認められないと認定して週刊現代に数百万、数千万の賠償の支払を命じていた時期に作られた映画なんですが、よほど自信があったんでしょうね。

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